こんにちは。TOMOです。
先日、ポーカー仲間内のSNSでこんな話題が投下されました。
==========
形式:トーナメント
プライズ:上位2枠のチケット(1・2位一緒。3位なし)
ブラインド:50/100/100(BBアンティ)
残り人数:3人(バブルタイム)
スタック:全員1000~1200点
前情報:30分程度スチール合戦で誰もぶつからずブラインドが徐々に上がってる
状況:BTNがダウン。SBがオールイン。BBの自分のアクション
ここでBBの自分はギリギリカバーされていて、ハンドを見たらKQs。
さあどうする??
==========
このシチュエーション、結構悩むんじゃないでしょうか?
とくにポーカー熱が加熱している日本の現状を踏まえると、例えば過去に何度かJOPTサテライトに参加して1枚目のチケットがなかなか取れない中、50エントリーで2枠のトナメでこのシチュエーションに出会ったら……
冷静に考えてアクションはできそうでしょうか。
まず前提を整理すると、2枠のチケットに対して残り3人。
誰か一人飛んでくれればその時点でトナメは終了、1人の敗者と2人のチケットゲットできる勝者が出来上がります。
続いてスタックは全員ほぼ横並びなので、自分以外の2人がぶつかればカバーしている側が勝利すればその時点で自分もチケット確定、カバーされている方が勝利しても1BB程度しか残らずほぼほぼ自分のチケット確定、です。
それは3人とも分かっているので、
誰かがボタンやSBでオールイン→後ろの人はコールできない
という流れが続いている状況です。
チップ量に偏りがあったり、ポーカー歴が浅くてこのバブルの状況を理解せずに安易にぶつかってくれる人がいたりすると話は変わってくるのですが、残念ながらチップは平坦で今回残っている他の2人はなかなかぶつかってくれません。
いずれ誰かがオールインを受ける時がくるのを待つことが続いているわけですが、この約10BBのオールインでKQsを持っている状況は”その時”なのでしょうか。
具体的にコールするか検討する際に「相手のレンジに対してKQsは勝率が66.7%あるか」と考えてアクションを決定する人もいそうですね。
より厳密に答えを算出させるため、もう少し細かく状況を設定します。
そこで
全員1000~1200点→全員1100点持ち、総スタック3300点
とします。
つまり、
自分(BB):100のアンティと100のBBをポスト。バックスタック900点
SB:50のSBをポスト。バックスタック1050点
ボタン:スタック1100点
でアクションスタート
となります。
そして
ボタン:フォールド(1100点持ち)
SB:オールイン(計1100点)
自分(BB):バックスタック900点、ハンドKQsでアクションを検討
と続きます。
このハンドが始まる前は全員が1100点持ちと同スタックなのでインチケ率は全員同率の66.7%かと思いきや、どうやら違いそうですね。
この時点でBB側は2つの選択肢しかありません。
降りる:100%の確率で残りスタック900点になる
コールする:相手の想定レンジとKQsで勝負する
くどいようですが、重要なのでそれぞれがどういう意味を持つか検証します。
まず、降りる=100%の確率で残りスタック900点になる 意味を考えます。
1位と2位のプライズが同じなので、単純に1~2位になる確率は残りスタックに比例(3位になる確率は残りスタックに反比例)します。
つまり、総スタックが3300点の中残りスタック900点になるということは、
900/3300=27.272727……
から総スタックの27.27%になるということなので、降りた場合チケット獲得できる確率が54.54%残る計算になります。
参考までに記載すると、降りたボタンは1100点なので66.7%、スチールが決まった世界線のSBは78.78%です。
(足すと200%=チケット2枚分です)
同スタックと言いながら、思ったよりも状況は変わっていますね。
次に、コールする=相手の想定レンジとKQsで勝負する 意味を考えます。
相手の想定レンジは自己判断にはなりますが、ここではレンジの100%とレンジの50%の2パターンで考えてみます。
「Entera Poker Caluculator」(無料アプリ)というアプリで相手の想定レンジに対するハンドのエクイティを計算できるので、こちらのアプリを活用します。
まず最初に相手のレンジが100%の場合です。
全員が全員ぶつかりたくないと考えていてスチールが飛び交っている状況での11BBのSBは例え32oでも72oでもオールインすればかなり高い確率でポットが獲得できるので普通にありえそうです。
相手のレンジが100%の場合、KQsのエクイティは以下の通り約63.6%です。
勝率62.60%・エクイティ63.59%と2つの指標がありますが、エクイティは(勝率+タイ確率/2)の計算式になります。
今回の勝負に勝てた場合はSBの残りチップは100点と虫の息になります。
それでもBBアンティの大きさから次のオールインに勝てば350点(総スタックの10%強)以上になれるので意外とチケット獲得率は残りますが、チケット獲得率は95%を超えてタイの場合はチケット獲得率が66.7%になると考えれば、
相手のレンジが100%の時KQsでコールした場合のチケット獲得率は
62.6% * 95% + 1.97% * 66.7% = 60.78%
に変化します。
(本当は次のポジションによってどちらの場合もチケット獲得率は微妙に変わりますが、簡易に計算しています)
次に相手のレンジが50%の場合、同アプリによると想定される相手のレンジは以下の通りです。
左上のAAから右下の22にかけるポケットペアの斜め線を軸に、右部分がスーテッド(マークが同じ)、左部分がオフスーテッド(マークが別)となります。
この青色部分を相手の想定レンジということにします。
(実際はQ9oやJ8oよりも87sや76sの方がオールインに適している等ありますが、今回はこのアプリのレンジで想定します。
興味ある方は「パワーナンバー ハンドレンジ」等で検索推奨です)
同アプリによると相手のレンジに対するKQsの勝率は56.07%・タイ確率は3.34%です。
こちらも100%の時と同様に計算すると
勝利した場合のチケット獲得率は95%・タイの場合はチケット獲得率が66.7%になると考えれば、
相手のレンジが50%の時KQsでコールした場合のチケット獲得率は
56.07% * 95% + 3.34% * 66.7% = 55.49%
となります。
以上を踏まえると、
降りた場合:チケット獲得確率54.54%
コールの場合:相手のレンジ50~100%想定チケット獲得率55.5~60.6%程度
となり、KQsは明確にコールした方が得が答えになります。
ではKQs以外ではどんなハンドをコールレンジに入れるべきでしょうか。
相手の想定レンジを上記と同様の50%で計算をしていくと、例えば33・A2o・A8o・A4s等は以下のような勝率となります。
33
A2o
A8o
A4s
KQsよりはポケットペアやAxでコールしたいという感覚の人も多いかも知れませんが、これらのハンドよりもKQsの方が勝率/エクイティが高いということが分かりました。
「KQsは先に入れるハンドでコールするハンドじゃない」
「Aハイやポケットは優先してオールインにコールするハンド」
等と感じている方がいたら、KQs・KJs・KTsあたりのハンドの評価を改めて検討すると今までよりも数%期待値の上がったプレイができるかもしれません。
最後に、プライズのあるオールインやオールインに対するコールの正しいレンジ(ナッシュ均衡)は数学的に算出することが可能です。
今回の例も
https://www.holdemresources.net/nashicm
というサイトで計算すると、SB側のオールインレンジは100%・BB側のコールレンジは16%(55+・A5s+・A8o+・K9s+・KJo+・QJs)となっています。
テーブルに座っている時にこういうサイトで計算することはできませんし、実際の相手のオールインレンジは誰にも分かりません。
それでも、一回一回こんな風にトナメの後に復習しておくと、次回以降はより期待値の高いプレイができるかもしれません。
少なくとも
・コールするかどうかは、今のスタックとハンドで判断するのではなく
降りた場合の状況とコールした場合の状況で比較して優位な方を選ぶ
・コールに適しているハンドの順位付けをしてみる
(AA>KK>QQ>JJ>TT……と並べた時、AKoやAQsはどこに入るのか
AKs>AKo>AQs>AQo>AJs>……と並べた時、KQsやKJsはどこに入るのか)
ことを念頭に置くだけで、後悔のしない決断とその後の振り返りがしやすくなると思います。
KQsはとくにそのポテンシャルのわりに過小評価されがちでかわいそうなので、適正に評価してあげて欲しいです。