いわゆる「正解」と違うプレイラインを取った自分をどう正当化すべきか

〇×検証

こんにちは。TOMOです。

ブログを無料のseesaaブログから独自ドメイン取得してワードプレスに移行しました。

どうしても無料ブログだと(とくにスマホの方が)自動挿入される広告ばかりで読み込みも遅く見づらくなっていたので、デザインも含めてかなり良くなったんじゃないかと1人満足しています。

さて、本題です。

先日ツイッターでこんな投稿が流れてきました。

アカギの1シーンですね。

「ミスらしいミスはしてないのに……どうして……?」

麻雀のように配牌という分かりやすい運が介在し、かつ相手のあるゲームは、どうしても負けてる時に「ミスをしたから負けている」のか、「ただ相手に比べて運がなかったから負けている」のか正確に評価するのは難しいです。


ポーカーの場合、麻雀よりも単純でハンドやボードの組み合わせも有限なので「ゲーム理論的に正しい」「統計上正しい」と言われるプレイだったかどうかを評価することは今日では難しくなくなりました。

僕が普段使っているsnowieというソフトも、自分のポジションやハンド・ボード・ベット額等を入力することで、AIが算出する正解のプレイが何なのかを教えてくれます。

そのため、ライブでもオンラインでも気になるプレイがあればsnowieに聞くことで、次同じシチュエーションがあった時には「正解」通りのプレイをすることが可能になります。


ただし、snowieの正解は、「相手も同様に正しいプレイすること」を前提に作られた言わば「正解の集合体」と言えるものです。

実際は人間を相手にするわけで、人によって癖や隙(弱み)がありその弱みにつけ込んだプレイの方が、snowieの算出する正解のプレイよりも利益的なことも多いです。


例えば、6人マックスのUTGがプリフロップでいきなり100BBのオールインをしてきたとします。
snowieからするとこのプレイ自体があり得ないのですが、このプレイに対峙したとします。
自分のポジションはBBで、UTG以外のプレイヤーは全員フォールドして回ってきたところ、ハンドを見るとAQoが入っていました。
コールしますか? ダウンしますか?

という問題を考えます。

AQはオフスーテッドでもプリフロップでは上位10%に位置するハンドですが、snowieは100%ダウン推奨です。

相手がQQ+やAKのみの上位2.5%のレンジでオールインしていたとするとかなり分の悪い勝負になるので、相手のレンジが分からない以上冷静に考えたら妥当な気がします。

実際、JJ+やAKを相手の想定レンジにしてもAQは28%程のエクイティしか無く、コールは大きく期待値マイナスのプレイになります。
(Snowie的には4.12BBのマイナスなので、相手のオールインレンジはもっと広い想定のようですね)


では、人間が相手の場合も常にダウンが正解になるでしょうか?

答えは勿論ノーです。


極端な話、毎回オールインすることで有名なバカラが好きなお金持ちプレイヤーがお座り1発目でオールインしていたらどうでしょうか?

相手のハンドは27oの可能性もあればかなり有利なA6oやQ2o等の可能性もあります。

運悪くKKやAAを持っている可能性もありますが、それでもレンジvsレンジ(AQvs100%)で見たらエクイティは64%近くあるので、このシチュエーションで相手のプレイスタイルを知っていた場合ここで降りるという判断は(中長期的に勝つことを目指してプレイしているならば)ありえないといえます。


ここまで極端で裏情報もあれば話は簡単なのですが、実際は微妙に相手が間違ったプレイをしていて、その正解と微妙に違う部分によって、こちらの取るべき(期待値最大の)アクションも変わるということがほとんどです。

そういう時、例えば
「相手はよくコールする人だから、KハイボードだけどQQでリバーバリューベットを打った。でも今回は普通に相手はKを持っていた」
「相手はブラフの多い人だからフラッシュもストレートもありうるボードでハイポケを最後までコールしたら、相手はリバーで2ペアになっていた」
「相手は3betの多い人だからATで4betでスチールに行ったら5betをされた」

といった説明で自分のプレイを決め、そして振り返り時も論理的な理由があるからミスプレイという認識せず終わりがちです。


でも、本当にそれで良いのでしょうか?
・相手はタフコーラー→だからシンバリューを通常より多めにする
・相手はブラファー→だからブラフキャッチを通常より多めにする
・相手はアグレ→だから通常りもリスチールを多めにする

どれも文章だけで見たら正解ですが、数値には現れていません。

「どの程度コールが多いのか」「どの程度ブラフが多いのか」「どの程度3betレンジが広いのか」を検証していかないと、それぞれのシチュエーションでの判断が正しかったのかまでは分かりません。


でも、数字を仮定しながら検証していくことで見えてくるものがあります。


「Kハイボードの中QQでバリューベット」を2つの具体例で比較していきます。

1つ目の例)
50/100 キャッシュゲーム
お互い100BB持ち

プリフロップ
ボタン自分Q♧Q♡ r300
BBタフコーラー c

フロップ 650
K♤7♤3♡
BB ✔︎
ボタン b162.5(1/4ポット)
BB c

ターン 975
5♢
BB✔︎
ボタン b487.5(1/2ポット)
BB c

リバー 1,950
J♢
BB ✔︎
ボタン b487.5(1/4ポット)
BB c

2つ目の例)

50/100 キャッシュゲーム
お互い100BB持ち

プリフロップ
ボタン自分Q♧Q♡ r300
BBタフコーラー c

フロップ 650
K♤7♤3♡
BB ✔︎
ボタン b162.5(1/4ポット)
BB c

ターン 975
5♤
BB✔︎
ボタン b487.5(1/2ポット)
BB c

リバー 1,950
6♤
BB ✔︎
ボタン b487.5(1/4ポット)
BB c

アクションとフロップは同じものになります。

ターンとリバーのカードだけ、こんな風に変わっています。

1つ目)K♤7♤3♡→5♢→J♢
2つ目)K♤7♤3♡→5♤→6♤

1つ目はSnowie的にも正しいアクション
2つ目はSnowie曰くターン・リバーは不適切なアクション(チェックが正解)
となります。

この理由を、まずはSnowieの認識するBB側のレンジをもとに見ていきます。


最初に1つ目の例を検証します。

まず、プリフロップではBBはコールを選択しました。
ここから、相手のレンジは以下の黄色い部分のハンドということになります。

そしてこのレンジが、フロップのチェック→フロップのコール→ターンのチェック→ターンのコール→リバーのチェック
の流れで、どんどん狭まっていくことになります。

1つ目の例に絞ってみていくと、今相手が持っている可能性のあるハンドは
<トリップス>
55
33
<2ペア>
KJ
K7s
K5s
……
J7s
J5s
……
53s
<Kペア>
KQo
KT
……
<K以外のペア>
A7
97
……
<ハイカード(役なし)>
QT♤♤
T9♤♤
……
それはそれはたくさんあります。

ということで、役としてまとめると以下のようになります。

<QQが負けているハンド>
トリップス:1.31%
ツーペア:7.95%
Kペア:25.74%
合計:35%
<QQが勝っているハンド>
Jのペア:0.86%
7のペア:44.56%
5以下のペア:19.57%
合計:65%

Kが出ているQQは心もとないとはいえ、ターンまでダブルバレルしているのに3回に2回は相手は自分よりも弱いハンドを持っていることになります。

ベットすると7のペア以上の役にコールをされると考えると、80回バリューベットして35回は負けて45回は勝つ計算になります。

実際はトリップスに小さくレイズされて渋コーすることで大きく振り込むリスク、弱いハンドにレイズされて降ろされるリスク、そして5のペア以下のハンドにコールが貰えるリターン等ずれはありますが、それらの少ない頻度で起こる事象を加味してもトータルでは「ベットすることは利益的」と言えそうです。


続いて2つ目の例を見ていきます。

フロップのチェック→フロップのコール→ターンのチェック→ターンのコール→リバーのチェック
という流れまでは1つ目と同じですが、相手の持ちうるハンドは以下のように大きく異なってきます。

<QQが負けているハンド>
ストレート/フラッシュ:34.88%
トリップス:2.43%
ツーペア:17.72%
Kペア:18.78%
合計:73.81%
<QQが勝っているハンド>
7のペア:26.19%
合計:26.19%

ターン時点でフラッシュがありえるボードになっているだけで、かなりQQは分の悪い状況となっていることが分かります。

もはやベットすることでKのペアや一部の2ペアをダウンさせるブラフベットとしてかなり機能するシチュエーションなのでは?というレベルです。

実際、ポットの1/4ベットに対してBB側は
Kヒット:100%フォールド
76以下の2ペア:80%コール/20%フォールド程度の混合戦略
33トリップス:91%コール/9%フォールドの混合戦略
その他:コール以上
とQQが負けているハンドもそこそこ降ろすことができています。

ただし、勝っているハンド(7ヒット)が100%フォールドになっていることで
弱いハンドを降ろすだけの機能:26%(無意味)
バリューとして機能:0%(無意味)
ブラフとして機能:20%(得)
相手への振り込みとして機能:54%(損)

という残念な結果となってしまいます。

相手がSnowieの場合、ここは大人しくチェックでショウダウンバリューを取りに行った方がよさそうです。


では、ここで今回の記事タイトルを思い出します。

Snowieと違うプレイラインを取った自分をどう正当化すべきか

この2つ目のハンドをプレイした過去を振り返り、例えば以下のように考えていた当時の自分を、今の自分は正当化できそうでしょうか?

以下の3パターンを検証します。

「相手のBB守るレンジは適切でターンまでのアクションも正しいけど、1ヒットしてたらこのベット額は最後までついてくるんだよなー」

「相手のBB守るレンジは適切でターンまでのアクションも正しいけど、リバーでフラッシュだったら例え2のフラッシュでもドンクしてくるんだよなー」

「相手はSnowieと同じアクション取るけど、こっちもSnowieと同じプレイランしているように捉えてそうだからブラフに切り替えると利益的なんだよなー」


「相手のBB守るレンジは適切でターンまでのアクションも正しいけど、1ヒットしてたらこのベット額は最後までついてくるんだよなー」を検証

この想定により、相手のリバーコール以上レンジは、以下のように切り替わります。

<QQが負けているハンド>
ストレート/フラッシュ:34.88%
トリップス:2.43%
ツーペア:17.72%
Kペア:18.78%
合計:73.81%
<QQが勝っているハンド>
7のペア:26.19%
合計:26.19%

今回は相手のレンジにハイカード(役なし)がないので、リバーは全てのレンジでコール又はレイズをすることになります。

つまり、QQ側でバリューのつもりのリバーベットは100回中26回がバリューベット、74回はただの振り込みとなります。

いくらリバーで降りれない相手のQQだったとしても、ボードとターンまでのアクションを鑑みて相手のレンジにそもそも負けていることを判断できないと
タフコーラー相手だからシンバリューを取りに行った
という正当化はただの言い訳にしかならないということですね。

(僕も当初よくやって、「あれはやりすぎ」と何度も言われてきました)


「相手のBB守るレンジは適切でターンまでのアクションも正しいけど、リバーでフラッシュだったら例え2のフラッシュでもドンクしてくるんだよなー」を検証

では、リバーで相手がチェックしてきたことを材料に相手のレンジが一部透けていたらどうでしょうか?

相手のレンジからフラッシュを除くと以下のような構成に変わります。

<QQが負けているハンド>
ストレート:7.94%
トリップス:3.44%
ツーペア:25.05%
Kペア:26.55%
合計:62.98%
<QQが勝っているハンド>
7のペア:37.02%
合計:37.02%

かなりQQが勝っている可能性が大きくなりました。(26%→37%)

それでも勝率は50%を切っているので、いくらベットしたら7のペアにコールが貰えるとはいえここもバリューよりも相手への振り込み期待値の方が高くなってしまいます。

「フラッシュだったら相手はベットするはずだ」というリーディング自体は相手の今までのプレイを見ていて発見した自分だけの情報なのでつい使いたくなってしまいがちですが、それでもここはその情報だけでコールに偏らずに、より精度の高い判断が必要だったということになります。

もし「ここは相手2ペア以上だったらベットして、1ペアだったらチェックコールだぞ」というリーディングだったらそれでようやくベットが正当化されるシチュエーションということになります。
(単純に
 7のペアのコンボ数 > ベットしない残りのコンボ数
 となる状況になるのはいつかを考えるとKヒットのみが右に残らないといけない、ということです)


「相手はSnowieと同じアクション取るけど、こっちもSnowieと同じプレイランしているように捉えてそうだからブラフに切り替えると利益的なんだよなー」を検証

最後に、中盤まで長々と書いた内容を否定する検証をしてみます。

QQのリバーベットを否定する結論としてこんなことを書きました。

>ただし、勝っているハンド(7ヒット)が100%フォールドになっていることで
>ブラフとして機能:20%(得)
>相手への振り込みとして機能:54%(損)

>という残念な結果となってしまいます。
>相手がSnowieの場合、ここは大人しくチェックでショウダウンバリューを取りに行った方がよさそうです。


もっともらしいことを書いただけで、数字で検証していませんでした。

数字で考えると、74回ベットすると20回ブラフとして機能し、負けているはずなのにポットを獲得できます。

そして50回はブラフ失敗で相手に振り込んでベット額の1/4ポット分が損となります。

つまり、トータルの期待値は

20回×(1ポット)+54回×(-1/4ポット)=+6.5

このブラフとしてのベットは期待値プラスということになります。

でもSnowieはここはチェックが正解といいました。


普通に考えるとおかしいです。

ただ、本来はこのボードではSnowieは1/4ポットベットは使わずに1/2ポットベットを使用するので
20回×(1ポット)+54回×(-1/2ポット)=-3.5
といった計算であれば正しい考え方になります。

このQQをショウダウンに回さず小さい利益的のためにブラフで1/4ポットベットを選択してしまうと、バリューベットの時に1/2ポットやポットベットして大きく利益を稼ぐことができなくなるというデメリットも大きそうです。


また、計算とアクションで答えが変わるのは、Snowieあるあるです。

少し複雑な話になりますが、このQQをベットするエラープレイによりボタンのベットレンジがBB側の想定するボタンのベットレンジより広くなります。

BB側はその想定をしていないため、適切な対応をしていない=Kヒットをブラフキャッチに回せていない と考えられます。

Snowieは相手が正しいプレイをする前提でもう一方のアクションが決まるので、相手が間違ってしまうと1ハンド単位では正しいプレイができないということです。
(ただし、あらゆるハンドとあらゆるボードを想定して全体通して相手に隙を与えないプレイになっているため、このような取りこぼしがあっても相手のミスによって長期的にプラスになる……という仕様です)

Snowieの仕様については以下のページでまとめたことがあるので気になる方はこちらをご覧ください;

【ポーカー】Snowieの強みと弱みの話


さて、「相手からエクスプロイトされることを気にせずこのハンドだけでブラフベットが利益的ならする」という考えであれば、実は1/4ポットベットは有効ということが分かりました。

そのため、

「相手はSnowieと同じアクション取るけど、こっちもSnowieと同じプレイランしているように捉えてそうだからブラフに切り替えると利益的なんだよなー」

という思考の振り返りであれば、このプレイは正当化できることになります。


「ミスらしいミスはしてないのに……どうして……?」

自分の運の悪さを嘆く前に、自分の思考やプレイラインを深く深く深掘っていくことで、自分ではどうしようもできない他責から自責の思考で以降の結果をより良いものにできる……というと少しビジネスチックでしょうか。

仕事にも慣れてきた社会人3年目くらいの研修で「他責から自責へ」なんて話を外部講師から改めて聞かされたことがありますが、運の要素が絡むポーカーでも自責思考で成長し、チップが自分のもとに集まっていくのではないかと思います。

(AAが捲られたら嘆きますし、KKでリバーAペロしたら発狂しながらコールしちゃいますけどね。)


ワードプレスでの初記事は、僕のブログらしくかなり長文になってしまいました。

最後まで読んでくださった方がいたら、いつも以上にありがとうございます。

TOMO@KL

マレーシア首都のクアラルンプール在住。

ポーカーが趣味で1~2ヶ月に1回程度仁川・マニラ・台北・ホーチミン等に海外遠征。
当初はライブトーナメントのみプレイしていたが、現在はキャッシュ・オンライン等形式は問わず幅広くプレイ。

マレーシア在住の方やポーカー好きの方等、積極的にメッセージいただけると嬉しいです。

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